二紀会
工房

<初めての混合技法 (油彩とテンペラによる)>2003.5.6更新
吉岡 正人(二紀絵画委員)

0)はじめに・制作の前に・A下地・B油性溶剤(油絵の具用解き油)・C乳剤(テンペラ用卵メディウム)・D顔料(粉絵の具)・E油絵の具・F水彩絵の具・他 (1)※ 作例「想い」 今回、私の研究室の大学院生Nさんに制作して貰った。F6号の作品で制作過程の写真を撮りながら約1週間で完成した。テンペラ絵の具は速乾性なので、かなり制作時間が短縮される。この点も混合技法のメリットの一つかもしれない。モチーフ写真。秋の陽光の中の横顔のシルエットの美しさが描きどころ。
 

(2) 地塗りしたパネル(別記)の上にチョークと水性色鉛筆でデッサンをする。チョークは油に溶けると透明になるので「あたり」をつけるのに最適である。水性色鉛筆は逆に油に溶けにくいので細かな描きこみが可能となる。

(3) 背景と上着に水彩絵の具で基本となる色を置いてみた。この際水彩絵の具は盛り上げないこと。

 

(4) 全体にブラウンピンクを油性溶剤で溶いて塗る。全体を一つの色で統一すると共に、前に塗った水彩を油でコートして水に溶けなくするとともに油彩的な発色にするためだ。油性の溶剤を塗る場合、とにかく薄く塗ることを心掛けたい。いわゆるグラッシの感覚ではなく、刷毛を手早くこすりつけるように動かし、画面に油がほとんど残らない程度でよい。その油絵の具が生乾きのときにテンペラ絵の具で描き起こしていく。顔はテンペラ白プラス水彩黄土の混色で、Tシャツはテンペラ白のみ、上着はテンペラ白プラス水彩黒の混色で描き起こした。

(5) 顔部分を描き込んでいく。4で使った白プラス黄土の絵の具のみで描き起こしていく。

 

(6) 背景に油彩のビリジャンとバーントアンバーを混色したものを塗り、新聞紙を押し付けてデカルコマニー状のムラを作った。このムラが地面のイメージを作るのに役立っている。髪はバーントアンバーの油絵の具をこすりつけるように塗った。

(7) 背景を描きこもうとしたが下の絵の具が動きすぎるのでここで一度乾かすことにする。制作の途中で油分が多すぎて描きにくくなった場合には無理に描き続けずに一度乾かすのが賢明である。

 

(8) 翌日水彩の黄土に少量の白テンペラを入れ背景を描きこんだ。ここでも新聞紙を用いてデカルコマニーしている。

(9) 顔の陰の部分は油絵の具のブラウンピンクをこすりつけるように塗っている。耳はその上でまた、描き起こしている。唇や頬の部分の赤みは、バーミリオン(油)をこすりこんだ上にまた黄土プラス白テンペラ絵の具で描きこんでいる。髪の明るい部分も同じテンペラ絵の具で描きこんだ。その後、油絵の具のバーントアンバーで黒い部分を描いた。

  (10) 上着のカーディガンは黒プラスバーントアンバーを油性溶剤で薄く溶いてこすりつけるように塗ったのち、明るい色で描きこんでいる。Tシャツの明部はテンペラのチタニウムホワイトのみで描きこんだ。全体に描きこんだ後、髪留めの青をアクセントにいれて完成。よく乾いた後画面保護のためタブローを塗る。テンペラ層はカビが生えやすいのでタブローによる画面保護が必要である

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