BACK                   ATELIER VEGA             2003.1.15更新

 

No2<大学授業雑感>

国立ブカレスト美術大学壁画科入口
(外内壁に学生の壁画が描かれている)

No2<大学授業雑感>

国立ブカレスト美術大学は、美術館、博物館、大使館の多くあるブカレスト中心近くにあり、壁画科は他の学科を圧して広いスペース、施設を有し、優秀な教授陣指導の元、プロの修復家多数による中世フレスコ画、イコンの修復作業、顔料研究も行っておりルーマニア国内修道院、修復総指揮施設でもあります。14〜15世紀のフレスコ画が修復されて行く様子を目の当たりに見ることができ大変勉強になりました。また校内の内外壁は学生の卒業制作壁画で覆われ、まるで美術館のようです。
私は日本人初の留学生でした。主任教授を含む5人のスタッフによる特別カリキュラムが組まれ、その都度専門家によるマンツーマンの指導を受ける事になりました。初回のモハヌ主任教授による「モルドバ修道院、ビザンチン美術概論」はスライドによる120分の講義で私一人のために行われ、身の縮む思いでしたが素晴らしいスタートとなりました。知性とユーモアに溢れた教授陣による美術史概論、ファイバースコープを覗いての顔料研究講義が終了し、いよいよ実技のフレスコ画制作に入りました。実技教室は小さな体育館ほどの広さで壁面と高い天井が実技用の壁となります。学生達の描いたミケランジェロ、ダビンチ、ジョット、ビザンチンフレスコ画が脈絡なく並び、実に楽しいのです。石灰がモウモウと舞う工事現場のような中で、私も拡大模写ビザンチンスタイル、キリスト像を壁に描くことになりました。シャイでヒゲ顔のロミオ先生は顔料見本作り、下地準備、漆喰作り、描画法まで丁寧に指導して下さいます。時間との戦いでもあるフレスコ画は漆喰を塗った分はその日の内に描き終えなくてなりません。学生達も脚立に乗り一心不乱に描いています。昼食抜きの立ちっぱなしの作業が教会の晩鐘の頃まで続きます。垂直の壁面は描きにくい上、ビザンチンスタイルも戸惑うことが多くありましたが留学1ケ月目の研修成果として3点のフレスコ画をブカレスト美術大学の壁に残しました。