二紀会
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二紀テクノ工房 2
■−パソコン初心者のための画像処理ソフトを用いたエスキース制作−■
二紀同人角間好資料提供2002.1.21new

二紀会の技法研究ページ
二紀会関係作家等の協力により、表現技法や、額作製方法などをホームページで公開することになりました。
■提供 社団法人 二紀会  ■編集 角間 好
−パソコン初心者のための画像処理ソフトを用いたエスキース制作−

はじめに
近年、パソコンはめざましい勢いで各家庭に普及しつつあります。気がつくと、いつの間にか、私のような機械音痴の生活のなかにも自然と入り込んできていました。パソコンは実に便利な機械で、宛名書き、文書作成、表計算等、使い出したら、もう手放すことはできません。生来の怠け者である私は、数年前から、なんとかこの便利な機械を絵画制作に生かすことはできないものかと試行を重ねてみました。その成果の一部をこの場をお借りし絵発表させていただきます。なにぶん、私自身が初心者なので、本ページの内容もパソコン初心者レベルのものですが、少しでも制作の参考にしていただければ光栄です。

1/必要な機材
・パソコン・スキャナ(デジタルカメラ)・画像処理ソフト(アドビフォトショップ等)

2/イマジネーション
絵画制作のプロセスは、人により、また時によって様々です。それ故、その結果生まれる作品にも個性が出るものと思います。私の場合は、制作プロセスで一番悩み、時間を費やすのが発想段階のエスキース制作です。表現したい気持ち、漠然としたイメージはあるのですが、それをどうやって表現していいものか悩み、スケッチブックに鉛筆でいろいろと殴り書きをしてみたり、雑誌を見たり、また、街をブラブラ歩いてみたりしてみても、なかなか前に進めないことが多くあります。そんなときに、発想の手助けとして、凝り固まった頭を解放するために用いているのが、画像処理ソフトを用いた画像の変形処理です。

3/画像処理ソフトとは
パソコンで絵を描いたり、写真を修正したりするソフトのことです。画像の取り扱い方式によって、直線・曲線・円、等の部分品を組み合わせて描くドローソフト系と、パソコン画面上のドットに、キャンバスに絵の具を塗っていくような感覚で色を付けて表現するペイントソフト系の二つに大別することができます。主として写真を加工するためのフォトレタッチソフトは大きく分けるとペイントソフト系に属することになります。私は主としてペイント系のソフトを用いています。

4/ペイントソフトでできること
ペイントソフトを用いてできる処理には、様々な種類のものがあります。私が主として用いているものは、「変形」「色調補正」「合成」等でありますが、それぞれに求めるものが違うのですから、自分のイメージに応じて、ふさわしいものを選び、活用するとよいと思います。以下にペイントソフトによる画像加工の例を示しましたので、参考にしてください。


図01元画像
→35oカラープリントで、港に係留されている漁船を撮ったものを、解像度250dpiでフラットベッド型スキャナ(ペッタンコの弁当箱のような形のスキャナ)を用いて取り込んだものです。


図03ポスタリゼーション
画像の階調数を変更し、平坦なイラスト風の画像に変更する機能です。


図05「レイヤーを用いての合成」
イメージを広げる上で最も効果的な機能のひとつです。異なった二つの画像もパソコン上では簡単に合成することができます。


図07「変形02」


図09「境界をぼかす」
境界をぼかした影部分を作り、その上に画像を配置することで、浮き上がったような雰囲気を表現できます。


図02モノクロ二階調(二階調化)
→画像のカラー情報を破棄し、白と黒の二色で表現する機能です。


図04「画像回転」(水平方向に反転)
一般的には、スキャナー等で取り込んだ画像の傾きを補正する時に用いることが多いのですが、元画像を、水平・垂直方向に反転させるだけでイメージが大きく変わることもよくあります。


図06「変形01」
画像は拡大、縮小、回転、ゆがみ、遠近法等、さまざまに変形することができます。


図08「変形03」


図10 二紀テクノ工房2資料提供者
角間好 作品

以上一例として挙げてみましたが、その他にも、ソフトによっては、フィルター機
能等で、様々な処理を施すことができます。

5/絵画制作に取り入れるには
前項で掲げてみたものは、写真から変形させた画像ですが、私の場合は、自分で描いた下絵やスケッチをスキャンして、その画像を変形させることからイメージを膨らませる方法をとることがよくあります。緊張感に欠けたような下絵が、縦・横比を少し変えるだけで、大変緊張感溢れる構成になるというケースもあります。また画面構成の決定に当たっては、普通に鉛筆、ペン、筆等を使って紙に描いたものをコピーにとり、その切り抜きを画面上でさまざまに移動させることによっても可能ですが、デスクトップ上の作業では画面上の移動だけでなく、必要に応じてその大きさや、時には形までも臨機に変化させることができます。作品1の場合は、画面下の招き猫および右下の自動車の位置と大きさがなかなか決められず、レイヤー機能を使って何度も位置を移動させて配置を考えてみました。自動車の部分は、わずかに傾きも変化させています。この便利なレイヤー機能ですが、以前は低価格のソフトにはついてないのが普通でした。しかし、最近
では技術の進歩とソフト会社の競争激化の影響で、低価格のものにもレイヤー機能を備えたソフトが増えてきています。無料のフリーソフトの中にもレイヤー機能を備えたものも登場してきています。画面構成が決まったら、配色を決めるわけですが、配色を決めるにあたって、以前はエスキースのコピーを何枚も作り、その上に彩色することでさまざまなパターンの配色を考えて制作に臨んでいましたが、絵画というものは、ひとつの部分の色を変えるだけでも全体のバランスが微妙に崩れてしまうことがよくあります。ひとつの色を変えることによって、他のほとんどの部分の色を塗り直したりすることも日常茶飯事であり、その労力は大変なものでした。また、色を塗り直す場合、絵の具によっては、泣き、ひび割れ、にじみ、ムラ等作業を滞らせる反応を引き起こすものも結構多くみうけられました。
ソフト上でこの作業を行えば、例えば、塗りつぶしツールの場合は、ひとつの部分に色を塗る作業は、塗りたい色をパレットから選び、該当個所にカーソルを持っていきクリックするだけで、希望の色で塗りつぶすことができます。色彩を塗り直す作業も同様にクリックひとつで一瞬に終わります。また、画用紙のように何度も塗り直しているうちに消しゴムや筆の摩擦によって画面がボロボロになることもありませんので、納得できるまで何度でもやり直すことができます。当然のことながら泣きやムラ等も一切起こる心配もありません。絵の具で作業している場合のいわゆる「乾燥待ち」の時間も必要ありませんので、効率的に作業を進めることができます。
最後に、これは全ての作業に共通して言えることですが、コンピュータによる作業では失敗してもアンドゥ
機能を使えば一瞬のうちに元の状態に復元することができますので、その点が大変便利です。

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