二紀会
工房

二紀テクノ工房 1
二紀会関係作家等の協力により、表現技法や、額作製方法
などをホームページで公開することになりました。

■提供 社団法人 二紀会  ■編集 櫻井 晨正
■協力 角間 好

−木製手作り油絵額縁の製作−

額縁とは
 絵画が建築様式(構造)の一部としてはめ込まれた祭壇画等に見られるものから、独立して存在するようになったのはルネッサンスからといえる。同時にキャンバスの普及や絵の具の進歩に加え、絵画の社会的流通性が起こってきたことから額縁の発展を見ることになる。
 現代における額縁の役割は単に絵画の保護のためだけでなく、作品のおかれている背景から隔離するため、また装飾を目的とした美的機能を与え、絵画の独立に大いに寄与するものになった。
 歴史的に見てもキュービズムの構成的画面においてすら額縁の必要性は認められていた。さらに、クレーの世界、モンドリアンの構成絵画でも額縁については十分に意識されていた。作品の求芯性を強めると同時に額を突き破り広がる拡張性をも求めて額縁の意義を認めていた。
 額縁の否定論となると、ジャクソン・ポロックを挙げなくてはならない。彼の絵画構成に見る焦点(重点)の希薄さと加え、作品は広がりの力を放ち、遠心的な空間を実現したものになっている。作品自身しっかりと自立し額縁の必要は疑問になってきた。後に、ミニマルアートに至っては全く額縁を必要としなくなった。
 反面、額縁の内側に隔離された絵画空間を守り、内在する求芯的空間を求める我々二紀会の多くの作品は額縁を必要としている。
 それらの要望に応えて今回は木質手作り額縁の製作を試みることにする。

材料
(1)木材、(2)接着剤、(3)金具、(4)45度切り道具(面取り道具)、(5)塗料、(6)一般的大工道具、(7)木材
 ※材木店にて70%〜90%乾燥済みのものを購入することを勧める。自宅での保管には十分に配慮すること。ねじれ、たわみは最終的に額の狂いになるからである。
 ※木材の種類
  杉、楢、ホワイトウッド、 スプルス、アガティス、
 ※各種の特徴 市場参考価格 (寸法 3x8x400cm)
  杉・・・木目が美しく表面加工がし易い。軽い。ねじれや歪みやすい。 1500円 
  楢・・・木目が美しく白木として使用すれば高級感があってよい。   9700円
  ホワイトウッド・・・最近建材として市場にでている。節多く木取りに注意。 1000円
  スプルス・・・・白木で加工しやすい。乾燥後歪みがでにくい。      6000円
  アガティス・・・スプルスと同様に安定した南洋産の素材。       6000円
 ※(余談)木質部材を加工する時間のない方は画材店にて市販のモールディング(額縁部材)を購入してもよい。油絵・水彩・デッサン用多彩なデザインで用意されている。


写真1


写真2


写真3


写真4


写真5


写真6

写真7


写真8


写真9


写真10


写真11

(2)接着剤
 木工ボンド・・・速乾性のタイプをさけるように。なぜならば、四隅の接合作業に時間を要し、作業をゆっくり確実にするためにもノーマルタイプにすること。
 エポキシ系接着剤・・・短時間の硬化接着に注意が必要だが強い接着効果が得られる。

(3)金具
 くぎ、波形くぎ・・・幅ひろの額縁の四隅に補強のために用いる。(写真1
 金具・・・直角平金具(鉄製よりもステンレス製の方が強度があり有効である。(写真2) 吊り金具・・・N型吊りかん(フクイ社製) (写真3) 
 →中 49mm   木ねじ付き1組500円 (1箱50組入り) 50号用
 →特大 86mm   〃       600円 (   〃    ) 100号用
 →100mm   〃  1000円(1箱20組入り)150号用
(4)45度切り道具・面取り道具
 本来額縁は四角形である。つまり隅が90度になっているわけで部材を45度に切らねばならない。これを「止め切り」といわれている。専門の大工さんにおいてもこの止め切 りはなかなか難しいと聞く。我々画家がいままで手を出せなかったのが、この正確な45度切りなのである。
 しかし、最近では精巧にカットできる電動工具が身近なホームセンターで手にはいることになってきた。しかし、電動工具は至便性に反して、極めて危険な場面に直面する 事があり、十分に工具について熟知しておく必要がある。
※鋸用角切りカッティングガイド (写真4
 →鋸目の細かい手引き鋸で45度にきる定規。丁寧に使用すれば結構45度に切れる。だだし、カット面は手引き鋸であるので粗面なる。

※電動卓上丸鋸(卓上スライド丸鋸 ) (写真5) 
 (鋸刃直径約210/260/380mmある。価格は45,000円〜90,000円程度)
※電動小型切断機(ライトカッター) (写真6
 アングル鉄材用切断が本来の目的であるが、丸鋸を木材用丸鋸(チップソー)に入れ替える。ただし、丸鋸の芯穴のサイズが同一でなければいけない。
(20,000円〜25,000円程度。ホームセンター調べ)
上記電動工具の使用にあたっては丸鋸チップソー(特に仕上がりが美しいのは刃数の多い仕上げ留め切り用丸鋸チップソー)を使用することをお勧めする。
 使用時はゆっくり時間をとって怪我のないように注意が必要。
※部材面取り・溝切り道具
  カンナ・・・・・・・・・・・一般的に平面取りに使う。
  丸カンナ・・・・・・・・・かまぼこ面取りに使う。
  溝切りカンナ・・・・・・溝切り装飾に使う。
  電動ルーター・・・・・上記3つのカンナをすべて可能にする。
 ここで部材面取りを電動ルーターで行った場合はルーター・トリマー用ビットの使い分けによりいろいろな額の装飾面が作れることを紹介しておきます。
 ・コロ付ぎんなん面ビット(写真7)・かく面ビット(写真8)  
(5)塗装
 額縁の仕上げ方は個々の好みによって千差万別である。従ってここでは数例を紹介しておく。
 ※ラッカー塗装
  →アクリルラッカー  シンナーを溶剤にしてエアーガン塗装が望ましい。
  →カシューラッカー  カシューシンナーを溶剤にして刷毛、エアーガン塗装。
 ※密ロウワックス    密ロウ40%+カルナバロウ60%+テレピン油適量。刷毛塗布。
 ※市販白木床ワックス  刷毛塗布。額縁作り作業過程

製作過程
1 部材の成形
 乾燥した木材を面取りなどの成形加工をする。 
2 寸法切り
 キャンバスの寸法プラス3〜5mmの余裕をみて内寸法(サイズの大きなキャンバスほど余裕を多い目に)の長さに木材をセットし、45度切り道具で切断する。面金を必要とするときはあらかじめ木質部材に小釘で面金をつけておくと最終的に美しく仕上がる。つまり、木材と面金を同時に接断する事になる。小釘で面金を付けるときは釘の先が額面に突きでないように短い釘を使うこと。
 ※留意点
  →指など、怪我のないように十分注意すること。!!!!
  →切断の時、サイズにはキャンバスの外寸、額縁の内寸、そして、余裕分にご注意。!
  →我々はひたすら45度に正確に切ろうと努力するが、専門家の意見では45度+紙1枚の角度の隠し味があるようです。下図のように最後の一隅に少し隙間がでる位が良いとのことです。(写真9
3 四隅の固定
 車荷台・単車等に用いる積み荷固定用ベルトが最適。キャンバスサイズが200号の場合は外周長さが906cmであるから1000cmのベルトが必要になる。500cmを2本用意しても良い。接着剤を十分に塗布の上、ラチェット付きのベルトを用いて縛る。(写真10
 額縁の四隅の角がベルトの圧力で痛まないように、工夫をする。角当ての金具を各自考案を。ベルト固定の際、四隅の接着剤のはみ出しを美しくふき取ること(写真11)。
4 補強
 乾燥を待って波釘、平金具、などをベルトをしたまま付ける。
5 装飾・塗装
 接着剤の乾燥を待ってベルトをはずす。その後、額に彫刻、着彩等表面加工を施す。着色仕上げの場合は下地にサンディングシーラーで素地を整えること。塗装の時はほこりのない場所で行うこと。
6完成!!

 秋の二紀展には充実した作品内容と素晴らしい額縁とでご出品ください。期待しています。

Copyright 1998-2015. Copyrights niki-kai All rights reserved.