小西 保文 (絵画 /委員)
Yasuhumi Konishi
1931 〜
埼玉
題名 ブリキ天国
サイズ 120F
路上で器用な手つきで空缶を切り裂いて、小さな自動車を作っているところに出くわして、思わず買ってしまった。子供の頃馴じんだあのゼンマイ仕掛のブリキのおもちゃへの郷愁がそうさせたと思う。車への思い出といえば、田舎道を走るそれのあとを追ったり、たまに乗せて貰ったときに嗅いだガソリンの匂いが忘れられない。それは都市文明へのそこはかの憧れや、未来への限りない発展への期待が、ないまぜになって好ましいものに思えたに違いない。現在、それが二酸化炭素を、或いは有害物質をまき散らす元凶として忌み嫌らわれる存在となったことに、いささかの感慨を禁じ得ない。ふと立ち止まってあれから過ごした数十年を振り返ったとき、この間の凄まじいばかりの変化に、ただとまどうばかりである。
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