滝瀬 源一 (彫刻 /委員)
Genichi Takise
1918 〜
東京
題名 偈能無(げのむ)
容易な解明から前兆“神聖家族”から入る。親愛な身障の弟が77才、ガンで僅かな間に死んだ。遅過ぎた夢の家族四人の幸せな生活を田園風景として描いた。然く肉親のガン死は我に大きな後遺症を残した。加齢に伴う肉体の衰えは事実“死”ととの対決となって制作上の日々を襲った、初めて助手を使って完了したのである。以来一転し“天国と地獄”と化し、正に死と生のテーマが生れ“偈能無”となる。巨木が朽ちて倒れると其処から発芽した木を更生樹と謂う。祖先の個体が崩れ去る刹那、女体にも謙遜の貎が影るが。それは断えることのない営みから壊された「心の臓」の手段を通して男の血流を翻流せしめ己が身体に更生の弟を誕生させる。その地下層は埋蔵された宝庫でもあるが屍交と化して何んの価値観もない。無の「大宇宙」を表現した。且なる”愛と死”の抱擁とは異次元の世界でもあり。損壊されたアウト・サイダーの断末魔の雄叫びと鎮魂歌でもある。
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